半導体製造装置大手の東京エレクトロン(8035)は、2026年3月期の通期連結業績予想を大幅に下方修正すると7月31日に発表しました。
従来は過去最高益の更新を見込んでいましたが、一転して減収減益の見通しに変更され、市場に強い衝撃を与えました。
今回の修正によると、売上高は従来予想の2兆6000億円から2兆3500億円へ(前期比3.4%減)、営業利益は7270億円から5700億円へ(同18.3%減)、当期純利益は5660億円から4440億円へ(同18.4%減)と、それぞれ大きく引き下げられました。また、年間配当予想も1株あたり618円から485円へと大幅に減配され、増配から減配へと転じました。
この背景には、一部の先端ロジック顧客による設備投資の見直しや、中国における成熟製品(レガシー)分野での投資縮小があり、生成AI需要の拡大などで強い業績が期待されていた同社にとっては、想定外の環境変化となりました。
特に2026年1~3月期に期待されていた受注の鈍化が響き、需要の先食いが影響した可能性も指摘されています。
市場ではこの業績下方修正を強く嫌気し、発表翌日の株式市場では同社株が急落。前日比で18%超安となる2万2330円のストップ安で取引が始まり、その後も安値圏で推移。
午前9時台には、東証プライム市場の値下がり率ランキングでトップとなりました。東エレクは日経平均株価への寄与度も大きく、同社の下落だけで指数を400円以上押し下げる要因となりました。
同社は2027年3月期を最終年度とする中期経営計画において、売上高3兆円以上の目標を掲げていますが、今回の業績下方修正によりその達成時期にズレが生じる可能性が出てきました。
会見で川本弘・常務執行役員は「精査は必要だが、今期の数字が下がったことで計画達成の時期がずれる可能性はある」と述べています。
とはいえ、今後の半導体需要については依然として強い成長期待があり、川本氏は「来期には新たなGPUの登場も予定されており、市場は大きく拡大する可能性がある」ともコメント。
実際、同社は引き続き設備投資には積極的で、子会社である東京エレクトロン宮城(宮城県大和町)では新開発棟の竣工も進められています。
東京エレクトロンにとっては、大きな修正となった今期の見通しですが、中長期的には成長戦略を継続する姿勢が示されており、今後の市場回復と投資環境の変化が注目されます。